こうよう泌尿器科クリニック

北海道苫小牧市光洋町2丁目6-13

排尿機能の障害

前立腺肥大症

(病気について)

 前立腺は膀胱の出口にあり、尿道を取りまくように存在します。通常はくるみ程度の大きさですが、加齢とともに肥大することで徐々に尿道を圧迫し、トイレの回数が増えたり尿の出方が悪くなったりします。多くは50歳を超えてから出現する病気です。

(症状)

 前立腺肥大症の初期の症状は「頻尿」で、トイレに行く回数が増え特に夜間に2回、3回と尿意で目が覚めるようになります。さらに進行すると尿の勢いが無くなり、尿が出始めるまで時間がかかるようになります。また尿が出始めても終わるまで時間がかかるようになるため、排尿後もすっきりと尿が出た感じがなくなります。前立腺肥大症が末期になると尿が全く出なくなり(尿閉)、腎機能の低下や尿路感染症を引き起こします。

(検査)

 エコーやCTで前立腺の大きさを測定します。また、実際にトイレで排尿してもらい機械で尿の勢いや量を測定することで、排尿の勢いに問題がないかを検査します。また頻尿などの排尿の症状は前立腺にできたがんによって引き起こされていることもあるため、採血やエコーなどで前立腺がんの可能性がないかも調べる必要があります。

(治療)

 前立腺肥大症の治療は、まずは内服薬からの治療となります。お薬は、前立腺肥大による刺激を抑えて頻尿を改善し、狭くなっていた尿道を広げることで排尿のキレを良くします。また前立腺を縮小させるお薬も併用し、前立腺を小さくすることで前立腺肥大症の症状を改善していく事ができますが、前立腺の肥大が重度である場合は、内視鏡手術で前立腺を切除する方法も御相談します。内服治療や手術などで前立腺肥大症を治療し排尿状態を改善することで、生活の質を良くしていくことができます。

過活動膀胱

(病気について)

 過活動膀胱の方は、自分の意思に反して膀胱が勝手に縮んだり、過敏になったりして、膀胱内に尿がそれほどたまっていないうちにトイレに行きたくなったり、がまんできない尿意がでる状態です。40歳以上の日本人では800万人以上がこの症状を経験していると言われています。過活動膀胱の原因はさまざまで加齢による膀胱機能の変化などが原因のひとつですが、若い方にも発症します。脳卒中の後遺症に伴う膀胱機能の低下、前立腺肥大症による刺激なども原因となります。

(症状)

 突然トイレに行きたくなり排尿をがまんするのが難しい状態となります。これを尿意切迫感と言いますが、この症状のため長時間バスや列車に乗るのが難しくなる方もいます。またトイレまで間に合わずに尿が漏れてしまう人もいます。排尿をしても尿が残っている感じがするため、またすぐにトイレに行かなくてはならず、頻尿の原因となります。

(検査)

 まず尿検査で尿に出血や細菌がいないか確かめ、尿中に細菌がいる場合には抗生剤などで治療します。次にエコーやCTで膀胱に腫瘍や結石など排尿に影響する異常が無いかを確認します。また、実際に排尿してもらった尿の勢いを調べたりエコーで残尿の量などを測定したりして膀胱の機能を評価します。

(治療)

 過活動膀胱の主な治療法は薬物治療です。膀胱の刺激を抑え膀胱の容量を増やすお薬で頻尿やがまんできない尿意を抑えます。過活動膀胱のお薬は多くの種類がありますが、お薬の副作用で便が硬くなったり唾液が少なくなったりする事があるため、患者さんの症状の程度にあったお薬を使用していきます。

神経因性膀胱

(病気について)

 膀胱は腎臓でできた尿を貯める機能(蓄尿機能)、貯まった尿を尿道から体外へ排出する機能(排尿機能)の2つの役割があります。正常な膀胱では、腎臓で作られた尿が膀胱に流れ込むと膀胱は風船のように膨らんで尿を貯めていき、おしっこをしようと思ったときに膀胱が収縮することで排尿することができます。しかし神経因性膀胱の方は、この膀胱の機能が低下してしまってうまく尿を貯めれなかったり、おしっこをしようと思っても排尿できなかったりします。神経因性膀胱の原因は加齢によるものが多いですが、糖尿病、脳出血や脳梗塞などの脳血管の疾患、脊髄などの神経の病気などでも起こることがあります。

(症状)

 膀胱機能が低下しているため、膀胱内にそれ程尿がたまっていないうちにトイレに行きたくなったり(蓄尿障害)、おしっこをしようと思ってもうまく排尿ができなくなったり(排尿障害)します。また尿意が低下し、膀胱に尿がたまっても自覚できなくなることもあります。このような膀胱機能の障害は尿失禁や尿路感染症の原因となり、また腎機能を低下させてしまうこともあるため治療が必要です。

(検査)

 実際にトイレで排尿してもらいその勢いや量を調べる「尿流測定検査」を行います。また排尿後にどのくらい膀胱内に尿が残るかをエコーで測定する「残尿測定」を行い、膀胱機能が正常かを調べます。CTなどで腎機能に悪影響が出ていないかを検査し、疑いがある場合は採血などで実際に腎機能を測定します。

(治療)

 膀胱機能が低下している場合は、お薬で膀胱の刺激を抑えたり、膀胱の収縮力を強めたりして通常の排尿ができるようにします。また男性の方で前立腺が大きく排尿障害の原因となっている場合は、前立腺肥大症のお薬なども併用します。これらのお薬を使用してもうまく排尿状態が改善せず、尿失禁や排尿困難が持続する場合は、カテーテル挿入による排尿を検討することがあります。1日に数回、自分で尿道からカテーテルを挿入し膀胱内にたまった尿を排尿させる方法(自己導尿)や、カテーテルを尿道に留置したままにする方法(カテーテル留置)などがあります。