こうよう泌尿器科クリニック

北海道苫小牧市光洋町2丁目6-13

泌尿器のがん

前立腺がん

(病気について)

 前立腺は男性にしかない臓器で、精液の一部である前立腺液を作ったり、精子の運動を助ける働きをしたりしています。ここにできるがんを前立腺がんといい、高齢化社会と食生活の欧米化に伴い近年増加しているがんの1つです。前立腺がんの発生は年齢が関係しており、50歳頃から出現し始め70歳以上で発症率が高まります。また、父親か兄弟に前立腺がんの方がいると前立腺がんが発症する確率が高くなり、動物性脂肪のとりすぎが前立腺がんの危険性を高めるとも言われています。健診などの採血を行った際にPSA(前立腺特異抗原)値の異常値を指摘されて泌尿器科を受診し、前立腺がんが発見される方も多くいらっしゃいます。

(症状)

 初期の場合の自覚症状はほとんどありませんが、がんが進行し尿道を圧迫すると頻尿や尿の出ずらさを自覚するようになり、さらに尿道や膀胱まで癌が広がると血尿が出現します。また前立腺がんが進行し骨転移などが出てきた場合には骨の痛みが出現するため、腰痛で受診した整形外科の病院で前立腺がんの可能性を指摘されることもあります。

(検査)

 前立腺がんの精査には、まず血液検査にてPSA値を調べます。PSAとは「Prostate Specific Antigen(前立腺特異抗原)」の略で、前立腺がんや前立腺肥大、前立腺炎などで上昇します。4.0ng/mL未満が正常値とされており4.0ng/ml以上の方が前立腺がんを疑う値となりますが、4.0ng/mL未満であっても上昇傾向がある場合は注意が必要です。現在、前立腺がんが発見される契機としては、症状が無いにもかかわらず健診などの採血にてPSA値が高いことで発見される方がほとんどです。

 前立腺がんの診断にはエコーや直腸診(直腸内指診)も有用です。エコーは前立腺の大きさやがんの存在を検査することができます。直腸診は肛門から直腸へ指を入れて前立腺を触診する方法で、前立腺の大きさやがんの広がりを調べることができます。これらはPSA検査と組み合わせて行うことで、前立腺がんの疑いがあるかを調べることができます。またCT検査やレントゲン検査、MRI検査などを追加することもあります。排尿状態の検査として実際にトイレで排尿してもらい、その勢いや量を調べる「尿流測定検査」や排尿後にどのくらい膀胱内に尿が残るかをエコーで測定する「残尿測定」にて、膀胱機能にも問題が無いかを調べます。

 これらの検査にて前立腺がんの疑いが強まった場合には、前立腺の組織を採取して顕微鏡でがん細胞の有無を調べる「前立腺針生検」が必要になります。生検で採取した組織に、がん細胞が含まれていれば前立腺がんの確定診断となります。

(治療)

 前立腺がんの治療は大きく分けて「手術療法(前立腺全摘術)」「放射線治療」「内分泌療法(ホルモン療法)」の3つにわかれます。前立腺がんの進行度や悪性度、年齢、全身状態、患者さんの希望などを総合的に判断して治療法を検討していきます。当院では内分泌療法を行っておりますが、手術や放射線治療をご希望の方は関連病院へ御紹介させて頂きます。

膀胱がん

(病気について)

 膀胱は下腹部にあり、腎臓で作られた尿を一時的に貯めておく袋状の臓器ですが、この膀胱内に発生するのが膀胱がんです。膀胱がんで明らかになっている危険因子は喫煙ですが、感染や放射線も膀胱がんを引き起こすことがあります。膀胱内に腫瘍ができる場合、良性の腫瘍のこともありますが、ほとんどの場合は悪性腫瘍である膀胱がんです。

(症状)

 膀胱がんの特徴的な症状は血尿です。血尿の程度は、肉眼で見てもわかるほどの血尿(肉眼的血尿)から顕微鏡でみてやっとわかる血尿(顕微鏡的血尿)まで様々です。とくに、痛みや発熱などの症状が無いのに血尿がでた場合は腫瘍による出血であることが多く、このような症状の方は詳しい検査が必要になります。まれに頻回の尿意や排尿時の疼痛などの膀胱炎症状を伴うこともあり、抗生剤などを使用してもなかなか膀胱炎症状が改善しない場合は膀胱がんが存在していないか詳しく検査する必要があります。また健診のエコーなどで偶然に膀胱がんが発見されることもあります。

(検査)

 膀胱や腎盂、尿管の粘膜は、尿路上皮(移行上皮)というひと続きの粘膜でおおわれているため、膀胱がんが発生した方は同時に腎盂がんや尿管がんも発生しやすく、これらの部位の検査も必要です。膀胱がんの診断にはCTやエコーなどの画像診断、尿中にがん細胞がないかを調べる尿細胞診検査などを行いますが、確実な診断には膀胱鏡検査が必要です。膀胱鏡検査は尿道から細い内視鏡を挿入し膀胱内の粘膜の状態を確認しますが、近年ではかなり細い膀胱鏡も開発され、疼痛も少なくなりました。膀胱鏡検査は外来通院で行え、CTやエコーでは発見できないような小さな病変も見つけることができるため、膀胱がんの疑いがある場合には必要な検査です。

(治療)

 膀胱内に膀胱がん、または膀胱がんを疑う粘膜の変化を認めた場合は、手術での治療が必要になります。経尿道的膀胱腫瘍切除術は麻酔下に尿道から内視鏡を挿入し、電気メスで膀胱の腫瘍を切除する方法です。膀胱がんの浸潤度など、診断をかねて行われます。手術は麻酔が必要になるため、施行可能な病院を御紹介させて頂きます。

腎細胞がん(腎がん)

(病気について)

 腎臓は腰の辺りに左右1個づつある臓器で、血液から老廃物をろ過して尿を生成し体内の余計な水分なども排出する役割を持っています。腎臓の実質にある「尿細管」にできるのが腎細胞がんです。同じく腎臓の「腎盂」にできる「腎盂がん」も腎臓にできるがんですが、この2つは全く別のがんであり検査方法や治療法も異なります。腎細胞がんは男性にやや多く、肥満や高血圧、喫煙なども関連していると言われています。また透析を長期に受けている方は腎細胞がんが発生しやすくなっています。

(症状)

 以前は血尿や側腹部の疼痛が出現するほど進行した状態でないと発見されなかったのですが、現在は症状のない早期の段階で発見されることが多くなりました。健診や他の病気で偶然に施行したエコーやCTなどで発見されることが多いようです。初期段階では無症状ですが、腎細胞がんが進行してくると発熱、全身倦怠感、体重減少なども出現してきます。

(検査)

 腎細胞がんの診断にはエコーやCTが有効です。これによって、腎細胞がんの大きさや広がり、転移がないかも調べることができます。腎臓にできる良性腫瘍との鑑別もCTで行うことができますが、さらに状態を詳しく見るためにMRIなどを行うこともあります。

(治療)

 腎細胞がんの治療の中心となるのは手術での腫瘍摘除ですが、近年は腫瘍部分のみを摘除する「腎部分切除術」や、お腹の小さい傷から内視鏡を挿入して行う、「腹腔鏡手術」などが一般的になってきました。また薬物治療を組み合わせた治療も行われるようになってきています。

腎盂がん・尿管がん

(病気について)

 「腎盂」は腎臓の一部で、腎臓でできた尿が集まる部分であり、「尿管」は腎臓と膀胱をつなぐ長い管で、腎臓でできた尿を膀胱まで運ぶ役割をしています。腎盂がん・尿管がんはこの部位から発生したがんで、腎臓の実質にできるいわゆる腎細胞がん(腎がん)とは異なるがんです。腎盂・尿管にできる腫瘍は良性の事もありますが、ほとんどが悪性のがんによる腫瘍で、喫煙などが発生のリスクと言われています。

 腎盂がん・尿管がんは尿路のさまざまな部位に多発しやすいという特徴があります。腎盂がん・尿管がんでは膀胱がんも合併しやすく、腎盂がん・尿管がんの治療後であっても膀胱がんの出現率は40~50%ほどあるため、腎盂がん・尿管がんの状態とともに、膀胱がんの有無も調べていく必要があります。

(症状)

 腎盂がん・尿管がんで一番多い症状は、血尿です。血尿の程度は、肉眼で見てもわかるほどの血尿(肉眼的血尿)から顕微鏡で見て初めてわかる血尿(顕微鏡的血尿)まで様々です。腎盂がん・尿管がんは血尿によって発見されることがほとんどですが、腫瘍による尿路の閉塞にて水腎症を来たし側腹部痛などで発見されることもあります。

(検査)

 血尿があった場合はどこから出血しているのかを明らかにするため、CT検査、レントゲン検査、エコー検査、膀胱鏡検査(内視鏡検査)などを行い、腎盂、尿管の状態を確認しますが、これらの検査でがんの広がりや転移の有無を調べることもできます。尿にがん細胞が混じっていないかを調べる尿細胞診検査も行います。この検査は尿を提出して頂くだけですが、がんがあっても尿細胞診検査に異常が出ないこともあり繰り返し行うことがあります。

(治療)

 腎盂がん・尿管がんの治療は手術が中心になります。がんのある片側の腎臓、尿管、さらに膀胱の一部を含めた腎尿管全摘術を行うのが一般的です。現在は腹腔鏡によって小さい傷で手術を行えるようになりました。また進行した腎盂がん・尿管がんでは抗がん剤による化学療法を併用することもあります。

精巣腫瘍

(病気について)

 陰嚢内には精巣(睾丸)、精巣上体などの臓器がありますが、この精巣に腫瘍が発生するのが精巣腫瘍です。精巣腫瘍のほとんどが悪性であり、痛みや発熱などがなく精巣が大きくなってくるときには精巣腫瘍の可能性があります。精巣腫瘍は20歳代から30歳代までに多く、ほかのがんとは異なり若年者に多い病気です。また、停留精巣の既往や家族に精巣腫瘍の既往がある方などは、精巣腫瘍の発生する危険性が高まっています。

(症状)

 精巣腫瘍では片側の精巣が硬くなったり腫れたりします。多くの場合、疼痛はなく熱が出ることもありません。腫瘍が小さい場合は、精巣内部に硬いしこりを触れるだけのことがありますが、精巣腫瘍が肺に転移すると息切れや血痰、骨に転移するとその部位の疼痛が出現します。

(検査)

 精巣腫瘍の検査はエコー検査で精巣の状態を確認します。精巣腫瘍は肺、リンパ節、肝臓、骨などへ転移することもあるため、CTなどで転移の有無を確認する必要があります。また、採血で腫瘍マーカーの上昇が無いかを調べます。この腫瘍マーカーは、病気の進行具合や治療効果を示す指標にもなります。

(治療)

 精巣腫瘍の診断がついたら、手術で精巣を摘除する必要があるため、手術可能な病院へ御紹介いたします。腫瘍を摘除するとともにその組織型を調べて、追加治療が必要かを判断します。